逮捕しちゃうぞ

おれのマンションは便秘気味なんですけど、
ベランダからの眺めはまーまー趣ありだ。
春は曙、夏は夜、秋は夕暮れ、冬はつとめて、
眺めるなら深夜、入浴時はさらなり。

景色は一番奥に☆がまたたく夜空。
夜空を切り裂いて下るマンションのスカイライン
□いフレームに規則正しくおさまる浴室の窓、
まだらに篭れる光、
それをさえぎりゆらぐ人影。
さながらエレベーターアクションを髣髴させる。
浴室の中身さえおおよそ想像に易い。

そして眼前2メートルに物干し竿。

約2年ベランダに立って、それなりに付き合い方も分かってきた。
夏は、外気に比べ室内のほうが暑く、窓の上の方から空気が外に流れる。
冬は、外気に比べ室内のほうがあたたかく、窓の上の方から空気が外に流れる。
結局、煙が室内がわに流れないようにするためには、タバコはいつでも立って吸うほうがいい。
ただ、向かいのマンションから時折顔出すギャングの視線を交わすためには姿勢は低いほうがいい。
この相反した環境に挑んで2年間、
結論は万歳しながら一服するか、スクワットしながら一服するか、どっちでもいい。

ちょっとまえにハヤシ立てられ、消え行くこの未定義な空間(塚本談)との付き合いも
残りわずかとなった。
涙がちょちょぎれる。
ふんっ。煙が目に沁みるのさ。

♪もう自分には夢の無い絵しか描けないと言うなら
塗り潰してよ キャンバスを何度でも
白い旗はあきらめた時にだけかざすの♪

爆発的な想像力はもはや限られた対象へでしかない。